森博嗣著 すべてがFになる、のほんの一説から人類の進化論の話題を繰り返ししてきましたが、多分これで最後。

田中ロミオ著 人類は衰退しました

1,2巻まとめて読みました。
人類が衰退し始めてから数世紀、地球は妖精さんのものだったりするそうです。

妖精が出てきて、何でもありのファンタジー作品ですが、敢えて、人類衰退を描いた近未来SF作品として読んでも十分満足のいく設定でした。

1巻の冒頭は、主人公が"学舎(学者)"から故郷へ帰るシーンで始まるのですが、この"学舎"を本文の引用で説明すると、

学舎とは、人類最後の教育機関でした。かつでの大学、かつての文化協会、かつての民間団体、それらの統合機関として学舎が生まれたのは、もう百年以上も昔の話だそうです。そういった教育機関の併合は、人類の加速度的な現状に伴い、世界各地で見られた光景でした。人口が減れば子供も減ります。生徒数が不足するようになりました。そこで他の教育機関と併合し、学区や分野を拡大する・・・という流れが多発するようになりました。後は坂道です。50年前の段階ですでに、学校のある町に世界中から子供が集まって、寄宿舎暮らしをしながら教育を受けるのは当たり前の光景となっていました。わたしたち12名の卒業をもって、人類最後の教育機関と言われた学舎も閉校を迎えました。これから教育とは、親から子に受け継がれるものに回帰していくのでしょう


だ、そうです。近い将来、日本もいづれこうなるのでしょうね。

2巻にはこんな描写もあります。(とある登場人物を、その登場人物を知っている人が説明するシーン)
文明の恩恵から離れ、自給自足の生活に入ったグループのひとつ。元々は、何らかの理由で農耕集団に加われなかった者たち。選択肢の一つとして遊牧生活を採用する。何世代かまではそれでうまくいく。生活水準は落ちたものの、暮らしは安定する。かつて絶頂に近かった化学文明から継承されたいくつかの知恵は、原始的な暮らしの中でも有用なはずだった。食物を集め、家畜を飼い、煮炊きし、織物を織り、ことによっては簡単な栽培も行うことが出来たかもしれない。かつての栄華を、生活の知恵へと落としこんでいった。世代を経ると、世界は変わる。科学の面影を忘れた子らにとって、科学の知恵は論理ではなく儀式だった。先祖が森羅万象から取り出した貴重な贈品だと信じ込む。たとえば祖父から受け継いだ工業製品のナイフ。彼らは当然再現できない。この不思議な利器はいったいどこから来たものか?天か地か火か水か神か悪魔か。(途中略)分子生物学を忘れ、工学を手放し、地理学を遺失し、医学疫学は便利なので残るかも知れない、科学も生活様式にまぎれてならひっそりと生存を果たすだろう、物理学・形而上学・情報学・数学についてはあきらめるしかない。天文学も星を読む以外の知識は数代と保つまい。こうしてグループは衰退していく


上記の引用は、隔絶された高原地域で生活をしていた人たち(とあるグループ)の説明分ですが、教育機関が無くなるということは、そういうことですよね(いや、もしかしたら、親から子への教育できちんと伝わるものかもしれませんが)。


そもそも、現在、我々がこういう生活を遅れているのは、昔からのごく稀に生まれてきた一部の頭の良い人のおかげです。
もし、人類が僕程度の知能しか持っていなかったら、未だに農耕は覚えず、狩猟生活をしていましたよ。
そう考えると、たとえば飛行機の開発なんてある意味僕とは別人種です。

ちなみに、この作品(1,2巻)では、何故人類が衰退したのかまでは、明記されていませんでした(現在4巻まで発売中)
構成としては、妖精さんとのやり取りがメインなので、期待するのは間違っているかも知れませんが、今後は、何故人類が衰退してきたのかの描写も加えて、よりダイナミックに物語が展開してほしいですね。

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西

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